高齢者と旅行
三和病院 顧問 高林 克日己
飛行機 旅程 ホテル 食事 |
保険 紹介状 盗難 |
誰が考えてもわかることですが、高齢者は疲れやすい、そして場合によっては死も覚悟しなければならない、などさまざまな問題があることを考えれば、一般よりもより余裕をもった安全な旅行が必要なことは言うまでもありません。
飛行機
長時間の飛行機はロングフライト症候群(エコノミークラス症候群)といって、長い間同じ姿勢で座っているために足の静脈に血の固まり(血栓)ができやすく、そしてこの血栓が剥がれて肺に詰まってしまうことがあります。これは肺塞栓と呼ばれる病態で、息が苦しく、また胸が痛くなります。特に血の固まりやすい人はこれを防ぐために、バイアスピリンという薬を服用します。これは普通のアスピリン(バッファリン)の少量のもので、これを服用することで血液がさらさらになり、詰まりにくくなるのです。若い人ではこうした血栓を作りやすい病気をお持ちの方に限られますが、高齢者の方はどなたでも服用した方が安心ではあります。 ただしもちろん他の痛み止め、熱さまし(消炎鎮痛剤)でアレルギーがある人やワーファリンなど他の薬を使っている方は一緒に飲んでも大丈夫か医師に確認をしてください。飛行中の睡眠剤の使用も最小量にしておくべきでしょう。また飛行中は脱水になりやすいので、水分をまめにとり、トイレに行くことを繰り返しますと、運動にもなり血栓の予防に繋がります。
旅程
当然ながら、若い世代と一緒の旅程で回るのには当然無理があり、如何に元気とはいえ年齢を考えた旅程にしなければいけません。特に時差ボケは高齢になるほどきついことになるので、調整のための予備時間をしっかりと持つことが大事で、連日早朝から夜遅くまで動くようなツアーでなく、一箇所に2泊以上泊まるようなツアーを選ぶべきです。高い山(ユングフラウヨッホやモンブランなど)に登るときにはゆっくりと時間をかけて動くことが一番高山病にならないやりかたです。慌てて回るのが一番危険です。
ホテル
通常では何ら問題がない方でも、旅行に出ると寝ぼけるという形で「呆け」が出てくることがあります。家に寝ているのと勘違いしてベットから落ちるとか、立ち上がって転倒するなどということは十分に考えられます。口の開いたトランクが横にあったりすると大怪我をしかねません。万が一落ちたときに怪我をしないように、また落ちたりしない形で付き添いがカバーできる体制で休むことが大事です。
食事
欧米のツアーでは脂っこい洋食が続きますので、若い人でも辛くなることがあります。時々でも何らかの日本食が準備できれば、ずっと楽になります。現在はインスタント食品も進んできましたのでこれらを持っていけばよいと思います。海外では当然ながらあったといっても高くまた好みの種類ほどのものは準備できないのが通常です。
保険
高齢者対応の保険は難しいというわけではありません。多くの高齢者が実際に海外旅行を希望している中、保険加入ができないということはないですが、高いのは覚悟してもいざというときの可能性は考えておくべきです。ご本人が万一のときはそれでよいと考えても、家族からみれば何かあったら迎えに行くとか、考えてもみなかった費用が発生することになります。こうしたことを付き添っていかれる方だけでなく、残っている家族の方にもよく了解しておいていただく必要があります。極端な例としては、万が一の時にはどのように対処するかの家族の委任も、取り付けておいた方が逆に安心ではないでしょうか。
紹介状
高齢の方の多くは何らかの病気をもち、またお薬を処方されていると考えられ、少なくてもこれら診断名、内服薬の内容については医師の紹介状を持っているべきです。この一枚があるかないかで、治療法が全く変わってしまうこともあるわけで、ぜひとも携行させてください。詳細内容でなく、上記の項目だけでもあるとないでは全く異なります。
盗難
これは健康とは異なりますが、当然泥棒には格好の標的になります。周囲の人が常に守ってあげる必要があるとともに、大金や高価なものを身につけないことが第一です。
高齢者の医学的特徴と海外旅行
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